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書籍『子どもが片づけしたくなる104のアイデア』で編集者の机も片づく!?

2020年5月21日
編集後記
若狭 和明

片づけってどんなイメージ?

 

たくさんの資料や原稿、校正紙に囲まれて制作している、というイメージのある書籍編集部。ドラマでもよくそんなスタイリングを見ます。実際は一部を除いて違います。きれいに片づけられていますよ。

1冊の本が完成するまでには、原稿、資料、校正紙は莫大な数になります。これらの管理が無頓着になっていると、本は完成しません。完成したように見えてどこかにアラが残っているものです。何をどこに、どの順番に保管しておくか、一時保管のスペースは設けているかなど、すべてに定位置がなければ、編集の精度が高まらないのです。

 

さて、職場を見渡してみると、整理されていないデスクがほんの少しあり。こういうスタッフに対しては「きれいにしなさい!」という注意だけでは足りません。片づけの目的は見た目をきれいにするだけでなく、ほかにもあるからです。

「片づけ=面倒」というイメージがある人は、この本を見ていただきたいです。2020年5月28日発売の「子どもが片づけしたくなる104のアイディア」(文化出版局)。子育てにスポットを当てた内容ですが、子ども抜きにして、気づかされることが多々あります。

2020/5/28「子どもが片づけしたくなる104のアイディア」(文化出版局)

 

片づけられないのには「理由」がある

 

本書の著者は、建築士、インタテリアコーディネーター、整理収納コンサルタントと複数の肩書きを持つ小堀愛生(こぼりめぐみ)さん。親子の片づけのインストラクターや、子育てハッピーアドバイザーという資格もお持ちです。整理収納のテクニックはもちろんですが、「子どもが片づけしやすくなる方法や環境」を主テーマとして、子育てについて言及しているのが本書の特徴です。

「片づけしなさい!」

と言って解決や改善することは何もありません。「なんで片づけられないのだろうか」と考え、その原因を見つけるところから“子ども片づけ”が始まるのです。その理由は、「片づけ方を知らない」「片づける場所がわからない」「片づけるための筋力や身長が足りていない」「片づけの目的を理解していない」などさまざま。これらの理由を見つけられないと悩みになります。誌面には、よくある親の悩みを解決するために、全国の家庭の収納事例と子育てエピソードを掲載しています。どの事例にも共通しているのが、子どもが「片づけができた!」と達成感を得られると、大人の心にゆとりが生まれてくること。「片づけしなさい」と怒っていては到底得られない感覚です。もちろん、子どもの成長もどんどん促されていきます。

よくあるお悩みを参考事例が解決する誌面。

 

さて、このブログの冒頭に書いた編集部にて、デスクを片づけられないスタッフには、どんな理由があるのでしょうか? 子どもの理由と同じではないはずですが、「片づけの目的を理解していない」というのは、先のスタッフだけでなく、多くの大人に当てはまるような気がします。

 

片づけられた場所からは、適切なものを選べる

 

本作りの最中は、自分自身の生活もその本の内容に影響を受けます。我が家には3歳の娘がいますが、本書に掲載されている悩みで「うちも同じような失敗を経験した」というのがいくつかありました。

私「今日は寒いから長袖にして」

娘「えー、これがいい」(半袖)

私「外は寒いの。風邪ひくよ」

娘「なんで? これがいいのに」

と言って泣く娘。引き出しには半袖と長袖が混在していました。外の気温を理解していない子どもに、適切な衣服を選べるはずがありません。引き出しの中が長袖のみだったら、選んだものを否定することはなかったでしょう。どれを選んでもOKな状況にしておく、これも片づけをする際に大切なことなのです。

また、おもちゃの定位置も改めました(妻が行ったことですが)。本書の事例にも出ていますが、幼いころは大人がいる空間で遊ぶことがほとんど。そこでおもちゃ棚を購入し、ダイニングに設置しました。絵本もこの棚で収納しています。これなら妻が料理をしながらでも子どもの遊ぶ姿を確認できます。

 

子どもの背丈に合わせた棚で、そこにボックスをおもちゃの種類ごとに収納。

 

さて、再びこのブログの冒頭に書いた編集部に触れます。片づけられていないデスクでは、適切なものを選べません。間違ったものを選んで誰も気づかないままだと、欠陥商品が生まれてしまいます。もちろんチェック体制を整えているのでミスを防ぐことはできていますが、ミスが生まれやすい環境は無意味でしかありません。

そう思い、先日、自分のデスクをきれいに片づけました。そう、私のことだったのです。

若狭 和明
スタジオポルト編集部部長。日本にある価値、を本で表現し発信するのが制作コンセプト。読者の心をくすぐりたい。