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公私ごった煮で2025年を振り返ります

2025年12月24日
コラム
渡辺 有祐

年の瀬ということで忙しなくしておりますが、ブログ、久しぶりの更新。せっかくなので、2025年を振り返ってみたいと思います。

年始は地元宇都宮の友人とキャンプをすることが恒例となっております。今年は夜半から雪に見舞われ、幻想的な景色のもと雪中キャンプを楽しみました。栃木県矢板市にあるこちらのキャンプ場は、落ち着いた雰囲気で、料金もお安く、とてもおすすめのキャンプ場です。

ここから車で1時間ほどの場所に、芦野温泉があります。湯治場として有名で、杖をついて歩いてきた客が、帰りには杖をつかずに帰れてしまうという逸話から、「杖忘れの温泉」とも呼ばれているとか。雰囲気もよく、清潔感もあって、ぜひ一度訪れていただきたい場所です。なんでも治りそうな湯の感じも素敵。

キャンプといえば、今年は、『決定版 キャンプ大全』(新星出版社)という本を制作しました。

キャンプブームも落ち着いたと言われており寂しい限り。2015年くらいから毎年なんかしらでキャンプ・アウトドアの本を制作させてもらってきましたが、確かに、めっきり野外に出る仕事が減りました。道具も情報もだいぶ飽和したのは事実。でも、また何かニーズを探して企画できたらいいなと思っています。

一方で、登山人気は回復傾向にあるようで、特に若い人で登山に興味を持つ人が増えてきたとか。実際に山へ行っていても、低年齢化を感じる場面は多々ありました。

今年は登山系人気YouTuberの麻莉亜さんの著書『ソロ登山の教科書』(マイナビ)のお手伝いをさせてもらいました(ちょうど今月、重版連絡いただきました)。麻莉亜さんのチャンネルではハラハラドキドキする動画がたくさんあるのですが、とても見応えのある映像ですので、ぜひご覧になってください。著書は、初心者向けの内容ですが、元トレーナーの麻莉亜さんならではの、登山のための体作りは充実の内容です。

私自身も登山が趣味で、生涯百名山完登を目指している身。今年は6座ほど稼ぎました。

万三郎岳(天城山)

浅間山(賽の河原まで)

早池峰山

西吾妻山

蔵王山

美ヶ原

いずれも夜明けとともに登り始め、晴れ男ぶりを遺憾なく発揮し、山頂付近では最高の景色を堪能しました。

残り40座くらいになってきたので、毎年このくらいのペースで登れたら、死ぬまでに100座完登も目指せなくはないところまではきたかな……。

しかし、心配なのは、今年の漢字にもなった「熊」のこと。百名山のうち9座が北海道にありまして、私はまだ利尻山しか登れていないのに、こんなに熊の被害が増えた状況で、残り8座も北海道の山を登らなければなりません。東北、新潟の山も10座ほど残っているし……。

それなりに登山をしてきているので、過去に山で熊と出逢ったこともありますが、今後はより万全な装備で臨まないといけません。

また話は変わりまして、5月に香川県高松市に行ってきました。

この地を訪れるのは約10年ぶりのこと。10年前に訪れたのは、大切な仕事仲間の告別式に参列するためでした。キャンプ・アウトドアの仕事が増え始めた当時、社内では対応しきれないと判断し、同じくキャンプを趣味としていたフリーランスの友人を業務委託契約で引き入れ、社員と同じように共に仕事をしてきた仲間でした。その彼女にステージ4の膵臓がんが見つかったときに宣告された余命は半年。そして本当に半年後に亡くなってしまいました。

告別式では、お忙しいご家族にはろくなご挨拶もできず、それきりになってしまっており、どこかやりきれない思いのまま時間が過ぎていました。

昨年、とあるウェブメディアでの仕事をしていたところ、関わっていた相手方の会社の方から、slackのDMで亡くなった彼女の話が持ち出されました。実はその方が彼女の同級生だったとのこと。ウチで働いていたことや私の名前を覚えていただいていたようで。

そこで、彼女のご家族に連絡をとってもらえないか、お墓参りをさせてもらえないかとお願いをしたところ、ご家族も快く受け入れてくれて、ご自宅に伺うことになったのです。

写真は、彼女が亡くなる2か月前に見舞いで高松に行った際に、一緒に行った居酒屋でした。働いていたときもよく呑みに行っていて、彼女が連れて行きたいと言ってくれていた地元のお店がそこでした。店名は変わっていましたが、店内の雰囲気や供される料理はそのまま。思い出に浸りながら呑んだ酒は、感慨深い味でした。

ご自宅の彼女の部屋はそのまま残してあるとのことで、お邪魔させてもらった際に、そのままにしているという本棚を見せてもらいました。彼女が好きだった本や一緒に作った本などが並び、しばらく背表紙を眺めたり、手にとってみたり、一部写真も撮らせてもらったり。

「本棚を見ればその人のことがわかる」とはよく言ったもので、並べられた本のジャンルや量、種類から、その人の興味・関心、性格、教養の深さなど、多角的に推測できるものです。まさに、好きなもの・ことが多く、それぞれのジャンルに造詣の深かった彼女を表わすような本棚でした。

一部、共通の趣味でもあったジャンルの本や、彼女が使っていたキャンプ道具などを形見分けしていただき、お母さんとはLINEを交換させていただいて、お父さんに駅まで送っていただいて、10年越しの思い残しをやっと消化できた気がします。また機会を作って訪れたいと思います。

ちなみに、ついでに帰り道に広島に寄って、映画『狐狼の血』や『仁義なき戦い』のロケ地でもあった、広島市や呉市なども訪れてきました。編集者はケチな性分なので、何かと詰め込みがちなことは許していただきたい。

ちなみに、2025年に携わった本で、もっとも印象に残っているのは『はじめての推し活』(高橋書店)でした。

久しぶりのキラキラ系の児童書だったこともありますが、明確な類書がまだこの世に存在しない本を制作することは、編集者にとって醍醐味でしかありません。私自身もそれなりに推し活を嗜みますので、熱量込めて携わらせていただきました。版元さんが作った「初にして決定版!」の惹句に恥じない、充実した内容になっております。

 

私自身、来年でスタジオダンクでの勤続20年の年になります。おかげさまで、たくさんのことを経験させてもらいました。とはいえ、節目だからと気負わずに、ただただ関わってくれる人たちに感謝しながら、出版を通して売り手も作り手も読み手も、すべての人が幸せになれる仕事をしていければと思います。

渡辺 有祐
フィグインク代表取締役。キャンプから登山、ダウンリバーまで、野外活動を趣味としながら、書籍の編集ライティングを生業とする。また、アウトドア料理専門レシピサイト「ソトレシピ」の初代編集長。